トピック

GIGA世代の子供たちがPCを組立て、仕組みを学んで初級マイスターに認定

インテル主催「親子カスタムPC体験」レポート

インテル主催「親子カスタムPC体験」

幼い頃からスマートフォンに親しみ、学校で配られている端末もタブレットPCとコンピューターに囲まれている今の子供たちであるが、その仕組みを知る機会はなかなか無い。

そんな子供たちを対象に、親子でPCを組み立てる体験イベントが8月10日、秋葉原で開催された。同イベントはインテル株式会社による主催で、参加者は受講を終えると「インテルPCマイスター」の初級認定を受けられる。デスクトップPCや本物のパーツに触れられる貴重な体験を夏休み中の親子連れが楽しんだ。


コンピューターに必要なパーツを知ろう

会場に入ると、机の上には既にパーツ類一式とPCケースがそろって並べられていた。箱に入った状態で置かれていて、いい緊張感と共にワクワク感が増してくる。

マザーボード、CPU、メモリ、SSD、グラフィックボード、電源ユニット、PCケースが勢揃い。ドライバーとネジ入れ用のケースも用意されている

早速手を伸ばして箱を開けたい気持ちはおさえて、まずはPCに関する知識をつけるところから。REDEE株式会社 恩田遙希氏が、「パソコンの中には何が入っていると思いますか?」と呼びかけ、PCを構成するパーツとその役割を説明した。

会場は秋葉原のLIFORK II
REDEE株式会社 恩田遙希氏

CPU、メモリ、HDD(SSD)、グラフィックボード、マザーボードの役割をそれぞれ体の部位に例えてやさしい言葉で説明。子供たちもスライドを真剣に見て、一つひとつのパーツについて理解をしている様子だった。また、さまざまな大きさや形のパソコンがあるが、どれも中身は同じ役割を持ったパーツでできていることも知った。

PCの必要なパーツについて、体の部位に例えながら学ぶ


組立てスタート!CPUって頭脳なのにこんなに小さいの?

知識をつけたところで、いよいよ組み立てだ。ここからは、テクニカルライター芹澤正芳氏と弊社佐々木修司が進行を務めた。子供たちは説明を聞いたばかりの本物のパーツを手にして、ひとつひとつ確認しながら自分の手で組み立てていく。

テクニカルライター芹澤氏(左)と弊社佐々木(右)。組立時にパーツの端子を触らないようにと説明

まずはマザーボードにCPUを取り付ける。「CPUはパソコンの頭脳と言われていてとても重要なパーツです。これで性能が決まるんですが、こんなに小さなものなんです」と子供たちに実物を見せながら説明。目の前に並ぶパーツの中で一番小さなものだったので、一度見落として「え?これ?」と驚いている子供もいた。

パソコンの頭脳であるCPUはこんなにも小さい

マザーボード上のCPUソケットを見つけたら、カバーを外してピタッと形を合わせて置き、カバーを戻す。一見、簡単な作業のようだが、小さな子にはカバーを外すためのレバーのちょっとした力加減が難しいし、CPUの表裏を逆に置いてしてしまう子もいたりして、ちょうど良いチャレンジになっている。

CPUの裏表を確かめて丁寧に設置


SSDとメモリは力加減が難しい!!

CPUを設置したマザーボードは練習用として回収し、次はいよいよPCケースに取りかかる。ケースには体験用に、既にCPU取付済みのマザーボードと電源ユニット、ファンが組み付けてあるので、ここにその他のパーツを組み込んで行くのだ。PCケースは子供たちにとってはとても大きい。保護者と一緒に横倒しにしてケースカバーを外して作業環境を整えた。

小学2年生の身体にはかなり大きいケース、パネルのネジを外して中を眺めてみる
保護者の手を借りながら自分の力で本体を扱っているのは小学5年生

次はSSDを挿す。データを保存する記憶装置だ。箱からペラっとしたSSDを出して、M.2スロットを探して端を斜めに差し込んだら、浮いた状態の一方をネジ止めをする。ちょっと扱いづらいが、サポートスタッフからのアドバイスと保護者の声かけで乗り切った。

SSDをケースから取り出す。「ここは触っちゃいけないところだね」と保護者が声をかける
M.2スロットを見つけて斜めに差し込み、ネジで固定する

続いてメモリ。データを一時的に保存する記憶装置だ。ケースから出して大切そうに手に取り「ゲームのカセットみたい!」と端子に注目している子も。スロットを探して2本差すが、メモリもペラッとした見た目なのにかなりぐっと力を入れて押し込まなければいけないので、皆苦戦している様子だ。保護者が手を貸して一緒にやるなど協力し合う姿が多かった。

兄妹で参加。メモリを一つずつ手に取り眺める
力の入れ具合が難しい。保護者が見守りながら適宜手伝う


これがゲームをスムーズに動かすグラフィックボード!!

次は、高精細な映像をディスプレイに映すのに必要なグラフィックボードだ。一般的なビジネス用途ならCPU内蔵の機能で十分だが、ハイクオリティの画像、映像や3Dを扱うには必須で、最新のゲームプレイにもグラフィックボードの性能が重要となる。「フォートナイトをやりたいとかマイクラで影MODを使って遊びたいときはこれが必要です」と芹澤氏。グラフィックボードはファンがついていて大きく存在感があり、ここまで小さいパーツばかりだったので、子供たちのワクワク感が上がる。

箱からグラフィックボードを取り出す。大きくて存在感がある

まず所定の場所のPCケース側のブラケットを外してから、グラフィックボードを差し込み、ネジ止めをする。何かとドライバーを使うシーンが多い。子供によっては普段ドライバーを使う機会がなく「こっち回し?」と保護者に聞いている姿もあった。小さな子には押し回しする力の入れ方がわかりづらく大きな挑戦だ。

グラフィックボードを差し込み、ネジ止めをする

さらに電源ユニットからのケーブルをグラフィックボードにつなぐが、少しわかりづらいのでここも保護者が積極的に声をかけていた。最後にケースカバーを元に戻して取り付けたら完成だ。完成と同時に「やった!」「イェーイ」という声が聞こえてきた。

グラフィックボードに電源ユニットのコードを差す

体験はここまでだが、他の部分も電源ユニットとの接続を行い、モニター等をつなげば、電源を入れてOSをインストールして使えるようになる。体験で電源を入れるところまでは行わなかったので、参加者からは「作ったパソコンは、あと何をしたら使えるようになるんですか?」という質問が出て、実際に動かしてみたいという思いが伝わってきた。


「あれやりたい!」をかなえるには?

最後に芹澤氏が、カスタムPCの世界を少し深掘りして紹介した。例えばeスポーツに興味があってゲームにスムーズな環境を手に入れるには、CPUとグラフィックボードの性能にこだわることが大切で、モニターやキーボード、マウスなどもゲーム用のものを用意すると良い。また、ゲーム実況や動画編集、VTuberなどにも挑戦するときに必要なものや、見た目の演出をして「映えるPC」にするための光るパーツ類などについて紹介した。

会場に展示されていた光る部品を使った「映えるPC」。インパクトが大きい

最後に「インテルPCマイスター初級」の認定証をもらい、どの参加者もとてもうれしそうだ。インテルPCマイスターの認定は初級の次に中級があり、知識と技術の講義に加えて認定テストがあり中学生以上の受講が推奨されている。

認定証をもらってうれしそうな参加者親子


家ではできない体験で親子のコミュニケーションが深まる

参加者した親子に話を聞いてみると、保護者の多くがイベントの情報をキャッチして、子供が興味を持ったので参加を決めたという。子供たちからは「楽しかった!」、「中を見たのは初めて」、「部品をはめるのが難しかった」、という声や、より具体的に、「自分にあったパソコンを作ってみたいと思いました。めちゃめちゃピカピカで性能いいやつ!」、「ノートパソコンしか触ったことがなかったので、パソコンの中に入っているパーツがわかってよかったです」などの感想が聞けた。

参加者の中には家庭で積極的にパソコンを使っていて、その仕組みに強い興味を持っていた子もいた。見守る保護者はとてもうれしそうで、「本人がすごくやりたいという気持ちが強かったので、もう大満足です。実際パーツ触ったことも初めてだったし本当にいい経験になりました」とか、「家庭ではやらせてあげられない経験なのでとてもよかったです」などと話してくれた。

自分で組み立てたPCと記念撮影! 写真は保護者のサポートの元、ゲーム実況のYouTubeを運営している小学生起業家のこっぴーさん

また、保護者の中にはパソコンの知識が豊富だったり、PCの自作経験がある人が一定数いて、うれしそうに子供たちの作業を見守っていた。子供に控えめに知識を披露する姿や、親子で静かに会話がはずんでいる様子があちこちにあったのが印象的だ。そんな保護者からは、「子供は普段見ているゲーム実況動画などと関連することが多かったようで、たくさんのことを話してくれました。親子で一緒に取り組めたことも話のきっかけになって楽しめました」という声があった。

もちろんカスタムPCに詳しい保護者ばかりではなく、「夫は自分でパソコンを作るのでよく話は聞いていたんですが、マザーボードとかメモリがどんなものなのかわかるようになってすごく面白かったです。これで『あぁ、あれね』と返せます」という声も。PCに詳しい保護者も、そうでない保護者も、子供と一緒に学べる楽しい時間になった。

見守ったり協力したりちょっと手伝ったり……いろいろな親子の姿が見られて会場も暖かい雰囲気に包まれた

今の子供たちは学校で1人1台のタブレットPCを使っているが、その仕組みを学ぶ機会はほとんどない。普段使っているタブレットPCとこの大きなデスクトップPCが、基本的に同じ役割のパーツでできているとは気づかなかった子も多いようだ。ある保護者は、「学校のタブレットPCやうちのノートパソコンしか見たことがないので、この大きなパソコンとはリンクしていなかったみたいですね」と話す。また、「子供は完成品しか知らないので、今のうちにこういう体験をして、コンピューターに興味を持つきっかけになったら」という思いで参加したという保護者もいた。

生まれたときから当たり前のツールとしてPCに親しんできた子供たち。普段、「なぜパソコンでこんなことができるのか」、「中身はどうなっているのか」、「どんな仕組みになっているのか」と疑問に思うことは少ないだろう。その点、このワークショップは、手を動かしてパーツを触り、それぞれの役割を学びながら組み上げられるので、興味を広げる良いきっかけになったのではないだろうか。夏休みの親子の思い出と共に、コンピューターの世界への入り口となるワークショップだった。