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学生メイカーが主役、親子で楽しむ京都のものづくり祭典「Kyoto Micro Maker Faire 2026」

Kyoto Micro Maker Faire 2026の会場となった京都工芸繊維大学 松ヶ崎キャンパス

 2026年4月26日、京都工芸繊維大学で、インプレス主催の「Kyoto Micro Maker Faire 2026」が開催された。

 Maker Faireは、「メイカー」と呼ばれるものづくり愛好家が、自ら制作した作品や技術を披露するお祭りであり、世界中で開催されている。京都では、過去に2019年、2023年、2024年に開催されてきたが、2026年は学生メイカーを主体とした「 Kyoto Micro Maker Faire - Young Maker Edition 」(以下、KMMF)として新たにスタートした。

 会場には、中学生・高校生・高専生・大学生などによる学生ブースが並び、ロボット、電子工作、3Dプリンター、デザイン、STEAM教育に関わる作品など、多彩な展示が行われた。入場無料となったこともあり、会場には親子連れの姿も多く、学生たちの自由な発想に触れながら、子供たちがものづくりの楽しさを体験できるイベントとして終日にぎわいを見せていた。

子供たちに大人気!ミニチュアカーレース「Nerdy Derby Kyoto」

 ここ数年、Maker Faireの人気企画となっているのが、 ミニチュアカーレース「Nerdy Derby」 だ。ワッシャーをタイヤにしたミニチュアカーを自由に作って、コースを走らせて競う。車体づくりや飾り付けのパーツもたくさん用意されており、アレンジは自由自在。小さい子供から大人まで楽しめて、かつ奥が深く、ギャラリーも一緒に盛り上がることができる、まさにMaker Faireにぴったりの企画である。無料で参加できることもあり、あっという間に参加者で埋まっていた。

作業スペースの様子。参加者が思い思いに自分だけのミニチュアカーを製作している

参加者はまず、工作エリアでタイヤとなるワッシャーや車軸となるボルトなどの基本パーツを受け取り、ミニチュアカーを組み立てる。木材や布、プラスチックなどの素材を使って、車体を自由にカスタマイズできるのが楽しい。作業机には試走用の短いコースも用意されており、子供たちは組み立てた車体の走行テストを行いながら、車づくりに夢中になっていた。

各作業机の中央には短いコースがあり、作ったミニチュアカーの走りを確かめられる

 レースは、ジャンプの距離を競う「ジャンプコース」と、ゴールまでの速さを競う「ロングコース」の2種類で行われた。面白いのは、「通常ルール」と「へぼルール」があり、へぼルールのときは、勝敗の決め方が逆になること。ジャンプコースでは、きちんとジャンプした車の中で、最も飛距離の短い車が勝ち、ロングコースでは、フィニッシュラインを通過した車の中で最も遅い車が勝ちとなる。単に速い車を作るだけではないところも、Nerdy Derbyの面白さだ。

こちらはジャンプコース。ジャンプの飛距離を競う
こちらはロングコース。フィニッシュラインを通過する速さを競う

 レースは3台ずつ行われ、予選、準決勝、決勝へと進んでいく。参加者の多くは小学生であり、自由な発想で作った自分の車が走るたびに、会場からは大きな声援が送られていた。各レースの優勝者や、デザイン性に優れた車の製作者にはオリジナルの盾が贈られた。もちろん、自分で作った車は持ち帰ることができる。参加した子供たちが、大切そうに自分の車を持ち帰っていたのが印象的だった。

子供たちが作ったロングレース出場のミニチュアカー

中高生の自由な発想が光る、学校で生まれるものづくり

Nerdy Derbyのように子供たちがものづくりを体験できる企画に加え、会場には中学生・高校生・高専生・大学生による多彩な学生ブースが並んだ。ロボットや電子工作、3Dプリンターを活用した作品から、身近な困りごとを解決するデザインまで、学生メイカーたちの自由な発想が感じられる展示が多く見られた。

立命館中学校・高等学校:校内ファブ施設「ミラボ」から生まれた作品

 同校が2025年9月に開設した「ミラボ」は、生徒が自由に使えるファブリケーション施設。ブースでは、生徒が授業や放課後に製作した作品を展示した。趣味で集めたイヤリングを可愛く飾れるイヤリングケース「きのこの群生地」をはじめ、生徒たちの柔軟な発想から生まれた作品が並んだ。

イヤリングケース「きのこの群生地」
屋根を外して内部を見られる家の模型
「DX月輪刀」など生徒の作品が並ぶ
トイレをモチーフとした3Dプリンター作品オブジェ「TO塔」

京都府立洛北高等学校:身近な困りごとを解決する「だれかのためのデザイン」

 京都府立洛北高等学校の「だれかのためのデザイン」ブースでは、身近な人の困りごとを解決する作品が展示されていた。たとえば、「傘の先が削られていくのが気になる」という悩みから生まれた「イシヅキガード」や、机からシャーペンが落ちて芯が折れるのを防ぐガード、ケーブル類を整理するための巻き取り機など。さらに、スマホの画面の汚れをふき取るクリーナーも展示。持ち手が寿司の形になっており、遊び心も感じられた。

傘の先を守る「イシヅキガード」
シャーペンの落下を防ぐガード
ケーブル類をうまく整理できる巻き取り機
持ち手が寿司の形をしたスマホ画面クリーナー

広島工業大学高等学校:「あそび心」を大切にしたSTEAMの成果

 学校法人鶴学園広島工業大学高等学校のブースでは、総合的な探究の時間で取り組んでいる「STEAM」授業の成果が展示されていた。同校では、STEAMの「A」をArtではなく「あそび心」と定義して、生徒が好きなものにこだわって取り組めるカリキュラムを展開している。ブースには、ガチャガチャマシンやペンギンみたいなフクロウ型ロボット、チンアナゴをモチーフにしたロボットなど、ユニークな作品が並んでいた。

ガチャガチャマシン
チンアナゴをモチーフにしたロボット

このほか、関西学院中等部理科部では3Dプリンターで製作した歯車や巨大歩行ゾイド・ガリウス、和歌山県立桐蔭中学校・高等学校科学部ではロボカップジュニアの出場ロボットやモデルロケットなどの展示も見られた。授業や課外活動を通して、ものづくりに親しんでいる中高生の姿が見られ、次世代のメイカーの広がりを感じさせた。

関西学院中等部理科部:歯車を駆使して製作された巨大歩行ゾイド・ガリウス
和歌山県立桐蔭中学校・高等学校科学部:左がロボカップジュニアの出場ロボット「ハンサムボーイ」。右がM5Stackをベースにした小型ロボット「スタックチャンズ」

ロボット、電子工作、鉄道模型まで 動かして見せる学生たちの技術

中高生による自由な発想の展示に続き、大学生や高専生、専門学校生による本格的な技術展示も多く見られた。ロボット、電子工作、鉄道模型、ペンプロッタなど、実際に動かして見せる作品が並び、学生たちが日頃の制作や研究で培った実装力を感じさせる内容となっていた。

同志社大学けいはんなアバターチャレンジプロジェクト:アバターロボット

同志社大学けいはんなアバターチャレンジプロジェクトのブースでは、遠隔地から自分の分身として会議に出席するためのアバターロボットが展示されていた。ロボットアームもあわせて展示されていたが、アバターロボットには搭載されておらず、アーム単体での動作確認を行っている段階。今後、アバターロボットへの搭載を目指しているという。

同志社大学けいはんなアバターチャレンジプロジェクトのアバターロボット。今後、ロボットアームの搭載を目指す

京都コンピュータ学院 制御通信部:Raspberry Piを搭載したライントレーサー

 京都コンピュータ学院制御通信部(CINCS)のブースでは、Raspberry Piを搭載したライントレーサーや、PS5の選別落ちCPUを搭載したマイニング向けボード「AMD BC-250」のデモが行われていた。ライントレーサーは、さまざまな機能を追加できる構成になっているという。一方、AMD BC-250では、VRChatによる3Dモデルの表示デモを行い、高いパフォーマンスを持つことを示していた。

Raspberry Piを搭載したライントレーサー
PS5の選別落ちCPUを搭載した「AMD BC-250」のデモ

奈良高専 電気技術研究会:リアルな鉄道模型と自動演奏楽器

 奈良高専電気技術研究会のブースでは、リアルな鉄道模型「Real-Model-Railway」や、「呼び込み君」の機能を踏襲した「呼び込みモドキ」、ICのみで構成された自動演奏楽器「M-BOX」などが展示されていた。Real-Model-Railwayでは、実車同様のマスコンも製作し、リアルな操縦体験を実現。M-BOXは、音符基板を自由に組み替えて演奏できることが特徴だ。

奈良高専電気技術研究会のブース
ICのみで構成された自動演奏楽器「M-BOX」

kuralab.@大阪電気通信大:micro:bitを使ったペンプロッタ

 kuralab.@大阪電気通信大学のブースでは、コントローラーとしてmicro:bitを使ったペンプロッタなどを展示していた。M5Stackなどを使うペンプロッタはよくあるが、教育用として設計されたmicro:bitを使ったものは珍しい。実際にペンプロッタを動かすデモも行っており、注目を集めていた。

コントローラーとしてmicro:bitを使ったペンプロッタ

情報芸術大学院大学 a-semi:センサーと制御を使ったインタラクティブ作品

 情報芸術大学院大学の学生によって結成されたa-semiのブースでは、センサーや制御を用いたインタラクティブな作品が展示されていた。床の明るさによって音程が変わる楽器や、ロボットと連携するドットイートタイプのゲーム、最大5画面でブロック崩しを同時にプレイするゲームのデモが行われていた。

ロボットと連携するドットイートタイプのゲーム。タブレット操作でロボットも一緒に動く
最大5画面でブロック崩しを同時にプレイするゲーム。パドルは共通なので難しい

大阪産業大学クリエイトセンター:実際に乗れる電動三輪車・電動バイク

 大阪産業大学クリエイトセンターは、学生のものづくり活動を支援する施設であり、学部や専門分野を問わず利用でき、汎用旋盤やフライス盤、溶接機、レーザー加工機や3Dプリンターなど多彩な設備を備えている。同センターのブースには、学生が制作した作品が展示されていた。実際に乗れる電動三輪車や電動バイクも展示されており、学生たちのレベルの高さがよくわかった。

実際に乗れる電動三輪車
実際に乗れる電動バイク

3Dプリンター、素材研究、デザインまで 暮らしに広がるものづくり

ロボットや電子工作のように動きで見せる展示だけでなく、素材や形、使いやすさに着目したものづくりも多く見られた。3Dプリンターを活用した造形、環境負荷の少ない素材の試作、プロダクトデザインの探究など、学生メイカーたちの関心は、技術の実装から社会や暮らしに関わる課題へと広がっていた。

京都工芸繊維大学 Erwin Viray Lab:ペレット式3Dプリンターの展示

 京都工芸繊維大学Erwin Viray Labのブースでは、ペレット式3Dプリンターに関する展示が行われていた。大型3Dプリンターでは、糸状のフィラメントではなく、砂利のようなペレットを素材として利用するものが多い。ペレット式3Dプリンターは、素材のリサイクルにも向いているが、既存のリサイクルポリエステルペレットは、そのままでは安定した出力が難しいことが多い。同研究室では、材料自体への添加物による改質を極力行わずに、造形の安定性向上を目指しているという。

ペレット式3Dプリンターに関する展示
中央の出力例は「茶室GEM121010」というペレット式3Dプリンターによるもので、造形サイズは最大1200×1200×1000mmで、ノズル径は1~10mmである

京都工芸繊維大学大学院 藤澤麻衣さん:バイオベースセメント素材

 京都工芸繊維大学大学院 工芸科学研究科 藤澤麻衣さんは、素材研究を通して、未来にどのようなデザインが存在しうるのかを探究している。ブースでは、循環性をもち、環境負荷の少ないバイオベースセメント素材を試作品として展示していた。この素材は、貝殻由来の消石灰と白磁原料であるカオリンの焼成物を用いて作られたもので、その活用方法も検討しているとのことだ。

貝殻を材料とするバイオベースセメント素材による試作

岐阜高専 機械工学科専攻科 -Melt.:光の同期現象を探るインスタレーション

 岐阜高専機械工学科専攻科の学生による高次素材設計技術研究舎 -Melt.のブースは、インスタレーション作品「MLX_002 Frustlizer」のデモが行われていた。複数の点滅する光源を置き、それらの点滅が同期したり、同期しなかったりする現象を「高次素材」として扱えるかを探る作品だという。信号待ちのときに、複数台の車のウインカーが同期したりしなかったりする様子から思いついたという。

光の点滅が高次素材として扱えるかを探るインスタレーション作品「MLX_002 Frustlizer」。

東京大学建築学科/岐阜高専専攻科:自動設計手法を用いたプロダクトデザイン

 東京大学建築学科と岐阜高専専攻科の学生の共同プロジェクトであるDesigned Generationのブースでは、トポロジー最適化などの自動設計手法を用いた作品が展示されていた。「使いやすさ」を基準に進化させた新しいデザインのカトラリー「SEKKI Project」や、トポロジー最適化により、使う材料を減らすことを目指して設計された椅子が展示されていた。

「使いやすさ」の基準で進化させたカトラリー「SEKKI Project」
トポロジー最適化によって設計された椅子

成安造形大学:サイズ調整できる布パーツ「Up-2」

 成安造形大学デジタルクリエーションオープンラボのブースでは、布から切り出したパーツをブロックのように組み合わせ、衣服や小物・かばんなどを作る「Up-2」を展示していた。「Up-2」は自由度が高く、衣服がサイズアウトしてもパーツを追加することでサイズを調整できるのが特徴だ。アップサイクルの手段としても優れており、過去には子供を対象にしたワークショップも行われたという。

「Up-2」による衣服。パーツを追加してサイズを調整できる

京都精華大学:日常の見え方を変えるメディア表現と電子工作

 京都精華大学からは、メディア表現学部と電子工作部が出展していた。メディア表現学部の早川菜月さんは、キーホルダーの部品を人間サイズに巨大化し、身の回りの物や自分に取り付けることで、現実をミニチュアのように見せる作品を展示。電子工作部では、ゲルマニウムラジオが別の世界線で使われていたら、という想像を基に作り上げた「パラレルラジオ」を披露していた。技術や電子工作を生かしたものづくりやメディア表現が楽しめる展示となっていた。

メディア表現学部のキーホルダー。帽子がミニチュアになったように見える
電子工作部のパラレルラジオ。魔除けのお札も貼られており、異世界感を演出

福井大学 Haikai Lab:発掘体験とヘルプマークケース

 福井大学工学部の学生プロジェクトHaikai Labのブースでは、3Dプリンターで作った化石の発掘体験「メカメカほりほり」と、ヘルプマークに取り付けるケース「ヘルプキャプル」が展示されていた。メカメカほりほりは、3Dプリンターで作られた化石の中にNFCタグが封入されており、スマホをかざすことで化石の情報を確認できる。ヘルプキャプルは、助けが必要な場面などをヘルプメッセージとして表示できるケースで、体験型や福祉目線のものづくりを披露した。

「メカメカほりほり」では、おがくずの中に3Dプリンターで作った化石を入れて発掘体験を行う
Haikai Labのブース。白と黒のものがヘルプマークに取り付けるケース「ヘルプキャプル」

学生メイカーを主体として再スタートした今回のKMMFでは、中高生・高専生・大学生たちの自由な発想や技術力が随所に見られた。ロボットや電子工作、3Dプリンター、素材研究、デザインなど展示の幅は広く、ものづくりが学びや探究、暮らしの課題へとつながっていることも感じられた。Nerdy Derbyのように子供たちが手を動かして楽しめる企画もあり、親子で気軽にものづくりに触れられるイベントとして、今後の広がりにも期待したい。

石井英男

PC/IT系フリーライター。ノートPCやモバイル機器などのハードウェア系記事が得意。最近は3DプリンターやVR/AR、ドローンなどに関心を持ち、取材・執筆を行っている。子どもを持つ父親として、子どもへのプログラミング教育やSTEM教育にも興味があり、CoderDojo守谷のメンターとして子どもたちにプログラミングを教えている。