こどもとIT BookLab

みんなの「読める」をデザインしたい、書体やユニバーサルデザインについて学ぶ児童書が発売

このコーナーでは、教育や子育て、テクノロジーに関する話題の書籍や、読者の皆さまの学びや情報収集に役立つ書籍を紹介します。
『みんなの「読める」をデザインしたい わたしは書体デザイナー』(著者:高田裕美/発行:株式会社Gakken)(出典:株式会社学研ホールディングス)

株式会社Gakkenは、ユニバーサルデザインの考え方から生まれた「UDデジタル教科書体」の開発秘話をたどる児童書『みんなの「読める」をデザインしたい わたしは書体デザイナー』を2025年11月13日に発売した。

今日では学校の教科書やテレビ番組のテロップなどに使われるようになったUDデジタル教科書体。その制作期間は8年に渡るという。同書は書体づくりを通して、「誰も取り残さない」デザインとは何かを考える1冊である。

著者は、数多くの書体を手がけてきた書体デザイナーの高田裕美氏。弱視や読み書きに困難さのある人たちに丁寧に話を聞き、試作と改善を繰り返して開発した同書体について、その背景や当事者への配慮がノンフィクションとして描かれている。

さらに、UDデジタル教科書体が生まれるまでのプロセスのほか、「書体とは何か」「ユニバーサルデザインとは何か」といった基礎的な内容を児童向けにわかりやすく解説。身の回りの本や看板、デジタル機器の画面などに使われている文字を紹介するカラーページから始まり、書体の種類や特徴を豊富な図版や写真とともに学べる構成だ。

世の中で使われている書体を紹介(出典:株式会社学研ホールディングス)
UDデジタル教科書体の特徴や工夫について解説(出典:株式会社学研ホールディングス)

章と章の間には、明朝体・ゴシック体・丸ゴシック体という3大書体をキャラクター化して紹介するコラムや、高田氏がこれまで手がけてきた書体の紹介ページも掲載。本文の書体にもUDデジタル教科書体を採用しているため、物語を読み進めながら、この書体の読みやすさを実際に体感できる。

ビジュアルが楽しい、知的好奇心を高めるコラム(出典:株式会社学研ホールディングス)

ユニバーサルデザインの視点は、教科書やデジタル教材、学校の情報発信のあり方を考えるうえでも欠かせないテーマになりつつある。将来の夢にデザイナーを挙げる子供はもちろん、教育現場でUDフォントを活用している教員や保護者にとっても、文字のデザインが学びや生活に与える影響についてあらためて考えるきっかけになるだろう。

身の回りにあるものからユニバーサルデザインの考え方を学べる(出典:株式会社学研ホールディングス)

目次

はじめに
1章 書体ってなんだ?
2章 ユニバーサルデザインとは?
3章 書体デザイナーの仕事
4章 UDの教科書体を作ろう!
5章 UDフォントを使ってもらうには?
6章 この先も「読める」を支えるために
あとがき:「みんなちがってみんないい世界を創る」(慶應義塾大学経済学部 中野泰志)

書誌情報

書名:みんなの「読める」をデザインしたい わたしは書体デザイナー
著者:高田裕美
発売日:2025年11月13日
定価:1,760円(本体1,600円+税10%)
判型:A5判
ページ数:128ページ
ISBN:9784052061608
発行:株式会社Gakken

編集部