トピック
バイブコーディングから不登校支援まで、AI時代に問い直す「教育の軸」
沖縄県マルチメディア教育実践研究大会レポート
- 提供:
- 株式会社 日本HP
2026年3月25日 06:30
次期学習指導要領の改訂に向けた議論が進むいま、学校現場は大きな転換期に立っている。生成AIの急速な進展、それに伴う学習観や教育観の転換、そして増加する不登校への対応。技術も、制度も、教育課題も従来の前提を問い直す局面にある。
こうした中で2026年1月に開催された「沖縄県マルチメディア教育実践研究大会」では、AI活用の最前線から情報活用能力の向上、不登校支援の実践まで、次の教育を見据えた議論が交わされた。その様子をお届けする。
■バイブコーディングが示す可能性、AIの活用は「命令」から「相談」へ
■感性・感情が知識を牽引する、AI活用から考える「学びの逆転」
■AI時代の学びをどう設計するか。情報活用能力と「デジタル放任授業」への課題
■保護者の「叫び」と学校の「対策」のズレ、不登校支援における学校の役割
バイブコーディングが示す可能性、AIの活用は「命令」から「相談」へ
沖縄県マルチメディア教育実践研究大会(主催:沖縄県マルチメディア教育研究会・共催:D-project)は、沖縄で30年間続いている教育研究会だ。ICTを活用した授業づくりを軸にさまざまなワークショップやセミナーが開催され、例年、全国から多くの教育関係者が集う。
今年のテーマは「教育のDX化で目指す個別最適な学びと校務の効率化」。生成AIの進化を背景に、AI時代の教育の在り方や活用方法、教育課題について語られた。
また、会場では多くの企業がブース出展を行っており、最新の教育テクノロジーを直接体験できるのも本研究大会の大きな特長だ。日本HPをはじめとする企業ブースでは、次世代の学びを支える学習用端末や、ハイブリッドな学習環境を実現する遠隔授業ソリューションが展示された。どのブースも沖縄という土地柄のせいか、非常にリラックスした雰囲気で参加者らが交流しているのが印象的だ。
こうした雰囲気の中で注目を集めたのが、AI活用の最前線である「 バイブコーディング(Vibe Coding) 」を取り上げた青山学院中等部講師 安藤昇氏のセッションだ。バイブコーディングとは、英語のスラング「vibe(雰囲気・ノリ・気分)」と「coding」を組み合わせた造語で、生成AIに「こんな動きを作りたい」「こういうイメージで表現したい」といった感覚的な指示を伝え、アウトプットを生み出す手法のこと。
従来のように専門的なプログラミング言語を使うのではなく、AIと対話をしながら開発を進めるのが特徴で、プログラミングの専門知識がなくても使い方次第でアプリケーションの制作が可能になる。
安藤氏は、バイブコーディングが広がり始めている背景について、この数年で生成AIの性能が飛躍的に向上している点を挙げる。GPT-5Proが人間の平均IQ100を上回るIQ148相当に達していることや、東大理三の問題においてChatGPT-o1とDeepSeek-RAが合格点を出したことを紹介した。
もはやAIは、人間の問いかけの意図をくみ取りながら生成できる段階にきていると安藤氏。ゆえに、「 これからはAIに『命令』するのではなく、『相談』を持ちかける感覚で向き合う のが良い」とアドバイスをした。なお、安藤氏は複数のAIサービスの有料版を活用しており、ここでの話は無料版の性能を前提としたものではない。
安藤氏は、バイブコーディングを実演した。音楽生成AIサービス「Suno」に口頭で「沖縄の麺職人がカンフーを使って壮絶な麺チャンピオンを決定する動画をつくるんだけど、それに合う曲を作って」と話しかけると、数秒で三味線の音色を取り入れた楽曲が生成された。続いて、動画生成AI「Sora」に「ソーキそばの職人が麺バトルをする映像をつくって」と話しかけると、湯気の立ち上るそばとダイナミックなアクションが融合した映像が出力された。
また、AIを使って開発ができるプラットフォーム「 Google Antigravity 」を用いてWeb制作も実演。「この動画と音楽を使って、クールなWebサイトを作って」と伝えるだけで、 HTMLコードを一行も書くことなくWebページが完成 。画面上に次々とデザインが生成される様子に、参加者からは驚きの声も聞かれた。
感性・感情が知識を牽引する、AI活用から考える「学びの逆転」
安藤氏がセッションで強調していたのは、AIに向き合う発想の転換である。これからは、AIに命令して「できるかどうか」を問いかけるのではなく、 「何を実現したいのか」を相談することが重要 だと語る。
たとえば生成AIでゲームを制作する場合、「ランキング機能をつけたい」と具体的に指示するのではなく、「このゲームをもっと面白くするにはどうしたらよいか」と問いかける。そうすることで、AIはときに人間では思いつかないような発想や仕掛けを提案してくる可能性があるという。安藤氏は「これまではデザインやコーディングに膨大な時間がかかったが、今は『作りたい』という情熱(バイブス)さえあれば、誰でも形にできる時代になりつつある」と語った。
こうした変化を受けて、安藤氏が授業で行っているのは、学習プロセスの「逆転」だ。青山学院中等部では、プログラミングの基礎学習に加えて、生徒たちは生成AIを活用して動画やゲームを作り、修正を重ねる中で必要な知識を後から学ぶ進め方を積極的に取り入れているという。生徒はVS CodeやGoogle Antigravityを用いて実装と動作確認を行い、コードの補完にはGitHub Copilotを活用し、設計の相談や疑問点の整理にはChatGPTを用いている。
安藤氏は、このような学習の変化について「 AIが膨大な知識を処理できるようになればなるほど、何を作りたいか、何を実現したいかといった感情や感性が重要になる 」と語る。そのため、教育では人間関係の構築や自己理解が一層大切になると指摘した。コミュニケーションが生まれる活動や、ワークショップでの体験などを通して感情や感性といった人間ならではの力を育むことが重要になるというのだ。
AI時代の学びをどう設計するか、情報活用能力と「デジタル放任授業」への課題
AIの進化に対して、学校教育はどう変わるべきか。基調講演では放送大学教授でD-project会長の中川一史氏が登壇し、情報活用能力の扱いやこれからの授業の在り方について語った。
中川氏は、現在議論が進められている次期学習指導要領の改訂について、情報領域に関する枠組みを整理した。小学校では総合的な学習の時間に情報の領域を設け、中学校では技術・家庭科を再編し、技術の中で新たに「情報の技術」領域が追加される。
9年間を通して情報を体系的に学びながら、情報活用能力の抜本的な向上をめざすのが狙いであるが、中川氏はその位置づけについて構造上の課題を指摘した。
次期学習指導要領では情報活用能力について、情報技術の「 活用 」「 適切な取扱い 」「 特性の理解 」 という3つの側面から育成すると示されているが、情報技術は小学校総合や中学校技術の中で扱われる一方で、「情報の活用」(情報技術ではなく)は、各教科に委ねられる構図になっている。これについて同氏は、「横断的に扱うという理念は重要だが、『どの教科でも扱う』ことが結果として『どの教科でも十分に扱われない』事態を招く」と指摘。情報活用能力を確実に育むためには、 各教科の中で意図的に位置づけ、具体的な学習場面と結びつける設計が不可欠である と語った。
また、子どもに選択を委ねる学びが広がる中で、中川氏が強く警鐘を鳴らしたのが「 デジタル放任授業 」である。端末を使うか、紙を使うか、個人で学ぶか、グループで学ぶかといった選択を子どもに任せる授業が増えているが、これだけでは個別最適な学びとはいえない。中川氏は「教師が子どもを見取っていなければ、それは放任である」と語る。
中川氏が、個別最適な学びの授業例として紹介したのは、教師が座席表を手に、児童生徒一人ひとりの考えや変化を記録しながら教室を回る姿である。異なる視点をもつ子ども同士を意図的に結びつける声かけや、「それはどういうこと?」と言語化を促す問いかけなど、教師が緻密に見取りながら、効果的に問いかけが行われている授業を評価した。
「 個別最適になればなるほど、教師は楽になるどころか、むしろ忙しくなる 」と語る中川氏。端末の活用が進み、子どもに選択を委ねる場面が増えるほど、教師は一人ひとりを把握し、学びを深める方向へ導く専門性が求められるというのだ。
保護者の「叫び」と学校の「対策」のズレ、不登校支援における学校の役割
安藤氏や中川氏のセッションに続き、研究会でとりわけ多くの来場者を集めていたのが、「不登校」をテーマにした講演だ。登壇したのは、保護者コミュニティ「明るい不登校」主宰で、我が子の不登校を経験した山本りか氏、不登校当事者としての経験を持つ西川太貴氏、そして教育行政や学校事情に詳しい一般社団法人ICT政策支援機構 代表理事の谷正友氏である。
「明るい不登校」は、2021年に発足した保護者主体のオンラインコミュニティ。不登校を“推奨”する団体ではなく、保護者が孤立や孤独に陥らないことを目的に、SNSやオンライン配信を通じて情報共有や対話の場を提供している。
山本氏は、教師に理解してもらいたいこととして、学校と保護者の視点の違いを挙げた。「 学校に保護者が持ちかける最初の相談は『叫び』に近い 」と山本氏。我が子が今日をどう生き延びられるかを模索し、藁にもすがる思いで相談した保護者に対し、学校は生活習慣の改善や学習の遅れといった具体的な対応策を検討することが多い。こうした視点の違いが、結果として保護者を孤立させ、すれ違いを生むことがあると説明した。
実際に「明るい不登校」による定期的なアンケート結果でも、保護者が最も求めているのは「学習の遅れへの対策」ではなく、「子どもとの関わり方」や「将来の見通し」に関する情報提供であったという。山本氏は、「学習面の支援はもちろん重要だが、それ以前に、 今の子どもとどう向き合えばよいのか、これからどのような選択肢があるのかを知りたいと考えている保護者が多い 」と強調する。こうした心情を理解しながら対話を積み重ねていくことが大切だ。
西川氏は元当事者の立場から、「先生からの『待ってるよ』『君なら来られるよ』という言葉は、応えられない自分を意識させられ、つらく感じることがあった」と語った。教師による励ましが、子どもの状態によっては負担になることもあるという。大人は何か対策して支えようとするが、子どもによっては「そっと見守ってほしい」「今の自分を否定しないでほしい」と感じている場合もあると西川氏。子ども側の複雑な心境が共有された。
そうした子どもの状況や気持ちを、どうすれば把握することができるか。谷氏は明るい不登校が整理した「 不登校の段階表 」を紹介した。一口に不登校と言っても、子どもによって状態はさまざま。「画一的な対応は逆効果になる可能性があり、子どもがどのような時期にいるのかを見極めながら支援を行うことが重要である」と語った。
山本氏は保護者コミュニティの役割として、学校と関わり、フリースクールや通信制など外部支援へとつなぐ「情報ハブ」としての存在を挙げた。「 不登校で悩む保護者が求めているのは『対話』と『見通し』。多様な選択肢を整理して伝えることが、不安の軽減につながる 」と語る。大人は子どもの自己決定を支える存在であるという考えのもと、子どもの意思を尊重する支援の重要性を伝えた。
3つのセッションを通じて突きつけられたのは、テーマこそ違えど「目の前の子どもをどう見取り、どう支えるか」という切実な問いである。教育DXやAIの活用、そしてデジタル学習基盤の整備。学びの道具がどれほど新しくなっても、教育の重心は動かない。子ども一人ひとりに、大人がどう向き合い続けるか。技術も、制度も、課題解決も、すべてはそこに帰着するといえる。



















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