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主体的に学べる生徒は「わずか7%」、AppleがEDIXで語る教育観 いま育てるべき力とは
―「EDIX東京2026」レポート③
2026年5月18日 06:30
先週開催された「第17回 EDIX(教育総合展)東京」に初出展したApple。同社のブースには10万円を切る「MacBook Neo」も展示され、多くの来場者が足を運んでいた。その様子は、 こちらの記事 でお伝えした通り。
本稿では、日本の教育市場を重視するAppleが、AI時代にどのような教育を描いているのか。特別講演「Appleが引き出す、学びの可能性」の内容をお届けする。
自信を持って学べる生徒は、わずか7%。今の学びに必要なものは?
特別講演に登壇したのは、Appleワールドワイド教育プロダクトマーケティング担当 シニアディレクター リヒティ・ドミニク氏。
冒頭で同氏は、「 7% 」という数字を投げかけた。これは、米ブルッキングス研究所のCenter for Universal EducationがTranscendと共同で発表した報告書(※)から得られた数字で、「 学習に対して自信を持ち、レジリエンスを発揮し、主体的に学びに取り組めていると感じている生徒は、わずか7%しかいない 」という調査結果だ。これを踏まえて同氏は、「裏を返せば、次世代の学びの在り方を変えていく余地がそれだけ大きいということ。私たちは学習者にもっと目を向け、そこに時間とエネルギーを注ぐべきだ」と語った。
※ 米ブルッキングス研究所のCenter for Universal Educationと教育NPO団体であるTranscendが2025年1月に共同発表した報告書「The Disengagement Gap」より。米国の小学3年生〜高校3年生 約66,000人を対象とした調査結果に基づく。
そのうえで同氏が、学習者に必要なこととしてあげたのが「 Agency(エージェンシー:主体性) 」である。学びにおけるエージェンシーとは、「 自分にとって最適な学び方を、自分自身で選び取っていく力 」のこと。「自分の興味を誰かに後押ししてもらったときは、心地よく、もっと探究したいという自信が湧く。その『もっと学びたい』という気持ちと自信こそが、子供たちが主体性を発揮している瞬間なのだ」と語った。
具体例として、蝶の羽化を観察して絵に描く幼児、ARアプリで地球の自転を立体的に捉える小学生、Keynoteやフリーボードで考えをプレゼンテーションに落とし込む中学生、AirDropとPagesで協働しながら学校新聞をつくる高校生、Xcodeのコーディング支援機能で自らのアイデアをアプリにする大学生など、学齢に応じた主体的な学びの実例が紹介された。学習者が新しいことに挑戦しながら好奇心を伸ばし、これからの時代を生き抜く力を身につけていく。そんな主体性を伸ばす文化を育むことが大切だと強調した。
10万円を切る価格が魅力の「MacBook Neo」、AIをオンデバイスで利用可能
Appleは、教育向け製品に「 学習意欲を引き出す 」「 表現する力を育む 」「 長く使い続ける 」「 可能性を解き放つ 」という4つの設計思想を掲げている。これからの社会で求められる能力を育むため、学習意欲を高め、すべての学習者が自分に合った方法で学べる環境を実現すること、そして安心・安全に長く使えることに重きを置いて設計されている。
特に、多くの教育関係者が慎重になるAIの教育利用については、「プライバシーは基本的人権であり、Appleの製品はデータの収集と利用を制限している。デバイス上でプライベートかつ安全なAI処理を行い、情報収集と共有方法について透明性を提供する」と説明。安心・安全な条件がそろわないと、学習の可能性も広がらないという考えだ。
こうした設計思想をベースに、教育機関を意識して開発されたのが、EDIXでも展示された「 MacBook Neo 」である。PC価格が高騰し、教育予算が厳しい状況の中で、10万円を切る手に届きやすい価格帯のデバイスが登場した。
アルミニウム筐体で軽量・コンパクト、最大16時間のバッテリー駆動が可能で、Apple A18 Proチップを搭載し、 クラウドに頼らずデバイス上でAIを動かせる 。リサイクル素材は最大60%とApple製品で最高比率となり、内部構造も部品交換がしやすい設計で、IT部門の修理対応コストにも配慮しているという。試験など集中を妨げない環境が求められる場面も想定してヘッドフォンジャックも残された。
このほか、負荷の高い作業に最適な MacBook Air 、プロ向けノートブックである MacBook Pro 、 A16チップを搭載したiPad のほか、 iPad Air(M3) や iPad Pro(M5) 、 Apple TV も紹介され、これらを組み合わせることでより最適な学習環境を築くことができると示した。
世界2万人の調査から見えたもの。Apple製品がもたらす教育効果は?
Apple製品は、教育現場でどのような効果をもたらしているのか。
講演では、製品と教育的成果の関係を示すデータとして、世界中の20,000人以上のK-12教師を対象とした調査結果が示された。それによると、クラス用デバイスとしてApple製品を選ぶと答えた教師は、他社製品に比べて26ポイント高い水準にあり、授業でMacを活用する教師は、探究や自主的な学びを通じて生徒自身が主体的に学ぶスタイルをとる傾向が強いという。日本においても、Apple製品を活用する教師から、生徒のモチベーションと主体性が大きく向上しているとの報告が寄せられている。
こうしたスキルの重要性は、世界経済フォーラムの見解とも一致する。同フォーラムは「2030年までに最も需要が高まるスキル」として、AI・テクノロジーリテラシーに加え、コミュニケーション、創造的・分析的思考、レジリエンスと機敏性を挙げており、自己管理やリーダーシップに関わるスキルは、今後ますます重要になると語る。
加えて、世界の Apple Distinguished Schools(Apple認定校) を対象とする大規模調査(※)も紹介された。「生徒が設計し、作り、協働できるとき、地域や学年に関係なくエンゲージメントが上昇する」「教師がデバイスのもたらすインパクトを信頼しているとき、より野心的な学習体験を設計する」など教育的アプローチと端末活用の関係性について有意な知見が得られた、と語られた。
事例として、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州のLoyola Grammar Schoolが取り上げられ、現場の教員からは「教室での時間が増え、デバイスのトラブルに割かれる時間が減った」「フリーボードのような協働ツールが、子供たちの遊び心と学びを広げている」といった声が紹介された。
※ボストンカレッジ・リンチ教育大学院のDr. Damian Bebellが主導した研究『Engaged Teaching: Engaged Learning』。
Apple Learning Coach、今夏より日本で本格始動
そして本講演で新たに発表されたのが、教員向け専門研修プログラム「 Apple Learning Coach(ALC) 」の日本での本格展開だ。ALCは、校内に「コーチ」となる教師を育て、その教師が同僚を支援することで、内側から学校を変えていく無料のプログラム。世界にはすでに7,000人を超えるコーチがおり、互いに支え合うネットワークも形成されている。日本ではこの2年間にわたってパイロット実施され、今夏より開始されることが発表された。
Appleはこのほか、規模と目的に応じた段階的な研修体系を整えている。100万人以上が利用するオンラインの「 Apple Education Community 」、基礎的なスキルを学べる自己ペース型コース「 Apple Teacher 」、教育機関に専門家が出向き、1日から最長1年間に渡りハンズオン支援を行う「 Apple Professional Learning Specialists 」など、それぞれの教育機関や教育者のニーズに合わせた複数のプログラムを提供している。
講演の最後にドミニク氏は、本日のテーマであった「主体性(エージェンシー)」を改めて強調。「学習者に与えられる最も強力なものは、自ら問いを発見し、答えを見つけ出す力だ。生徒が自分自身を学びの主役だと感じたとき、教育は大きく変わる」と述べ、「『もし、私たちが違うやり方をしたら何が起こるだろう?』、その問いかけから始めてみてほしい」と、会場の教育者たちにエールを送った。
ドミニク氏単独インタビュー、「児童生徒がAIを使って学ぶ」をどう捉えるか
講演後にドミニク氏への単独インタビューの機会を得た。EDIX初出展となった狙いやMacBook Neoがもたらす教育へのインパクト、さらにはAI活用に関する考えについて話を聞いた。
――今回、AppleはEDIXに初出展しました。このタイミングでEDIXに出展された狙いは何ですか?
教育はAppleにとって中核的な価値であり、私たちの仕事すべてに教育への思いが組み込まれています。いま教育のニーズは大きな変化を遂げており、だからこそ教育者と学習者の皆様をこれまで以上に支えたい、そんな思いがEDIX参加の背景にあります。加えて、いまは非常にエキサイティングな時期でもあります。新しいMacBook Neoが、教育機関・教職員・学習者向けに画期的な価格で提供されることになりました。一人でも多くの学習者と教育者の方々に「Macのマジック」を体験していただきたいと考えており、それをお伝えする絶好の機会だと感じています。
―― MacBook Neoは、教育分野でどのようなインパクトをもたらすと考えていますか?
MacBook Neoは、教師から学習者まで毎日使うすべての人に向けた一台です。美しいデザイン、優れた耐久性、高いパフォーマンスを兼ね備え、教育機関向けには画期的な価格でご提供しています。さらにAppleシリコンと16コアのニューラルエンジンにより、大規模言語モデル(LLM)をオンデバイスで動かせるなど、AIを前提に設計されており、セキュアでプライベートな環境を保ったまま強力な処理が可能です。加えてiPadという選択肢もあり、GIGAスクール構想での9,000校への導入など活用が広がっています。ワークフローに応じて両方を選んでいただくこともでき、今後の展開を楽しみにしています。
――日本では、多くの教育関係者がAIの教育利用について不安や懸念を持っています。Appleとして、児童生徒がAIを活用して学ぶことをどのように考えていますか?
世界経済フォーラムが発表した「これから必要とされるスキル・トップ10」では、AIに関するスキルが第1位に挙げられており、ますます重要になってきました。とはいえ、AIはツールボックスの中にあるツールのひとつと考えており、適切に使うことで、児童生徒の「声」「選択」「主体性」を引き出し、持っているスキルを何倍にも広げてくれます。その上でAppleが最も重視しているのが、プライバシーとセキュリティです。Appleシリコンによって、LLMやAIをオンデバイスで安全に活用できます。各学校で進むAIポリシー策定に対しても、MDMによるセキュアな運用支援などを通じてサポートしています。
以上、EDIX東京におけるドミニク氏の講演および個別インタビューの模様をお伝えした。同氏が語る「主体性(Agency)」を育むことが、これからの教育の鍵となることに異論はないだろう。この課題に向き合う大切さに改めて気づかせてくれる講演であった。
5月13日~15日に開催されたEDIX東京2026の関連記事をまとめています。製品レポートや各社ブース、セミナーの内容など今年の教育トレンドをチェックできます。
▶ EDIX東京2026の記事一覧はこちら

































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