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ゲームは「遊ぶ」だけじゃない! TGS2026で見えた教育・人材育成・地方創生への広がり

2026年9月17日から幕張メッセで4日間開催された「東京ゲームショウ2026」。『Minecraft Dungeons II』のブース(撮影:編集部、以下同じく)

日本最大級のゲームの祭典「東京ゲームショウ2026(以下、TGS2026)」が、2026年9月17日から幕張メッセで開催された。台風25号の接近により最終日は中止となったものの、会期中の総来場者数は約25万8,000人にのぼった。

ゲームを入口に、子供たちの学びや創造力はどのように広がっていくのか。本稿では、eスポーツを切り口に新たな学びやデジタル人材育成の可能性に注目。株式会社マウスコンピューターと株式会社サードウェーブが実施したステージイベントを中心に、ビジネスデイ初日の模様をレポートしよう。

マウスコンピューターと四国大学、eスポーツを「学び」に変える産学連携

マウスコンピューターのブースでは、四国大学(徳島県)との産学連携をテーマにしたパネルディスカッション「eスポーツがつなぐ産学連携の可能性」を開催。大学の教育現場におけるPCやゲームの活用について語られた。

「東京ゲームショウ2026」マウスコンピューターのブース

登壇したのは、四国大学 情報教育センター講師の長瀬 大氏、株式会社AVAD代表で四国大学 特別研究員の谷山詩温氏、マウスコンピューター取締役 法人営業本部本部長の金子 聡氏の3名。

マウスコンピューターブースで行われたパネルディスカッション「eスポーツがつなぐ産学連携の可能性」

四国大学は、徳島市にある私立大学だ。これまでは文系学部が中心の大学だったが、2026年4月に文理融合型の「デジタル創生学部」を新設し、デジタル分野の教育・研究環境の充実を図っている。

四国大学のキャンパス。2026年4月には、文理融合型の「デジタル創生学部」を新設した
マウスコンピューター取締役 法人営業本部本部長 金子 聡氏

四国大学とマウスコンピューターの接点となったのは、2019年に徳島市内の商店街で開かれたeスポーツイベント「とくしまeスポーツフェスティバル~闘電街~」だった。金子氏は、教育現場のニーズを直接聞ける機会はメーカーにとって貴重であり、このイベントが大学との関係を築くきっかけになったと振り返る。

その後、2021年10月に包括連携協定を締結。コンピューターサイエンスやデータサイエンス、eスポーツに関する共同研究をはじめ、キャンパスのICT環境整備、DXによる社会課題の解決や人材育成などを連携の柱としている。

また、この協定に基づき、マウスコンピューターは2022年3月、四国大学のPC教室に「MousePro」212台と液晶ディスプレイ307台を導入。さらに、学生向けの推奨PCも納入した。

包括連携協定の締結を機に、PC教室の環境整備やスタジオへの協賛、PC点検会の開催など、産学連携の取り組みが広がっている
四国大学 情報教育センター講師 長瀬 大氏

PC教室の環境整備によって、授業の様子にも変化が生まれた。長瀬氏によると、以前はPCの起動に時間がかかり、授業前に電源を入れておくよう学生に伝えることもあったというが、今では、起動時間を気にすることなく、当たり前に使える環境になった。

また、2023年には、学生のPCトラブルによって授業が止まる課題を解決するため、メーカー担当者による「PC点検会」も始まった。

四国大学 情報教育センターのPC教室。授業支援システムと連携し、すべてのPCを同じ設定・同じ環境で管理している

マウスコンピューターは2022年、四国大学における多目的ライブ配信スタジオ「TAG-RI-BA STUDIO」の開設にも協賛した。同スタジオでは、学生がeスポーツの配信に加え、動画編集や大学・地域の情報発信などにも取り組んでおり、金子氏はこの場を「学生の放送局」と表現。eスポーツ部はここを拠点に、小学校への出張授業や障がい者施設と連携したイベントなど、年間60件以上の活動を実施。同スタジオが大学と地域をつなぐ場にもなっている。

学生が配信を担う「TAG-RI-BA STUDIO」。eスポーツの対戦配信にも使われている

後半では、金子氏が子供たちのデジタル分野における学びの継続性について問題を提起した。小学生向けのプログラミング大会などで優れた力を発揮しても、その経験や能力を高校や大学で生かせる機会が十分にないケースがあるという。議論は、小中学校で培ったデジタル分野の経験を、その先の学びや成長につなげる受け皿をどうつくるかという話題に広がった。

これに対し、長瀬氏は、四国大学には新しいことにチャレンジしやすい土壌があり、デジタル分野やeスポーツの取り組みも、そうした環境の中で広がってきたと説明した。

株式会社AVAD代表 / 四国大学 特別研究員 谷山詩温氏

元プロeスポーツ選手の谷山氏は、かつてはゲームが否定的に見られていた時代もあったが、今では教員がeスポーツ部の顧問を務めるほど、ゲームを取り巻く環境が変わったと語る。谷山氏自身も、四国大学と共同開発したプログラミング教材「SPACEBLOCK」などを活用し、ゲームの仕組みや楽しさを取り入れた学びの実践に取り組んでいることを紹介した。

こうした取り組みに共通するのが、長瀬氏の「eスポーツを学びに来るのではなく、eスポーツで学んでほしい」という考えだ。eスポーツそのものが学習の目的ではなく、ゲームやeスポーツへの興味を入口に、さまざまな学びへとつなげていくことを重視している。

四国大学では、2027年に新学部の拠点となる「デジタル創生館」とアリーナが完成する予定だ。新たな施設の整備によって、デジタル分野の教育や学生の活動がどのように広がっていくのか、今後の展開に注目したい。

2027年に完成予定の「デジタル創生館」とアリーナ

企業版ふるさと納税が後押し、島根県のデジタル人材育成と地方創生

サードウェーブのGALLERIAブースでは、NASEF JAPAN/ナセフ ジャパン(特定非営利活動法人国際教育eスポーツ連盟ネットワーク日本本部)によるトークセッションが開催された。島根県や島根県eスポーツ連合と連携し、次世代デジタル人材の育成を通じて地方創生を目指す取り組みが紹介された。

「東京ゲームショウ2026」サードウェーブのGALLERIAブース

登壇したのは、島根県 商工労働部 産業振興課 産業デジタル推進室の望月 恵氏、島根県eスポーツ連合 事務局長の木村一彦氏、NASEF JAPAN 専務理事の大浦豊弘氏の3名。ファシリテーターは、NASEF JAPAN 理事長 柿原正郎氏が務めた。NASEF JAPANは、ゲームやeスポーツを活用した教育コンテンツの開発や、高校生のeスポーツ大会などに取り組む国際教育団体で、サードウェーブもその活動を支援している。

島根県での取り組みの背景には、デジタル機器を使える人とそうでない人の間に生じる格差、いわゆる「デジタルデバイド」の問題があった。行政手続きのオンライン化が進む一方で、スマートフォンの操作に不慣れな高齢者も少なくない。望月氏は、誰もが行政サービスを利用できる環境を整えるためには、こうした課題への対応が必要だったと振り返る。

デジタルデバイドの解消を目指して始まった、島根県の取り組み
島根県 商工労働部 産業振興課 産業デジタル推進室 望月 恵氏

そこで島根県が着目したのが、日頃からスマートフォンを使いこなし、eスポーツを通じてPCやハードウェアにも親しんでいる高校生だった。高校生にスマートフォン教室の講師を務めてもらい、高齢者に使い方を教える、そんな活動が始まった。望月氏は、「高校生にとって人に教えることは、自分の知識や能力を試す学びの機会にもなる」と話し、地域の課題解決と若者の学びを両立させる取り組みとなった。

こうした活動を後押ししたのが、サードウェーブによる企業版ふるさと納税だ。企業版ふるさと納税は、企業が自治体の地方創生の事業に寄附すると、税制上の優遇措置を受けられる制度。島根県はこの支援を受け、高校生によるスマートフォン教室から、誰もがデジタルに触れて学べる「デジタル拠点」の整備へと取り組みを広げていった。

島根県eスポーツ連合 事務局長 木村一彦氏

とはいえ、望月氏によると、拠点の整備にあたっては、地域にゲームやeスポーツへに対する先入観が残っていたという。そのため、単にゲームを楽しむ場にするのではなく、「社会の課題・地域の課題と結びつけて、力を発揮してもらう」ことを提案。ゲームやeスポーツを、若者が地域の課題解決に貢献するためのツールとして位置付けた。

こうして、デジタル拠点は県内に3カ所に整備された。木村氏によると、拠点では、NASEF JAPANが開発した教材「ニジクラ(NJ craft LAB.)」と、島根県eスポーツ連合の教材を組み合わせ、地域の教育機関と連携しながら講座を展開してきたという。ニジクラは、『Minecraft(マインクラフト)』を使ってグループで課題に取り組む、探究学習向けのワークショップ教材だ。

島根県内に3カ所のデジタル拠点を開設

こうした取り組みをさらに発展させたのが、2025年11月20日に出雲科学館内にオープンした「いずもデジタルスタジオ」だ。出雲市の産業を担うデジタル人材の育成を目的とした施設で、高性能ゲーミングPC「GALLERIA」が10台並び、誰でも無料で使える。家庭では手の届きにくい最新の機材を、子供から大人まで気軽に体験できるようになっている。

高性能ゲーミングPC「GALLERIA」を導入した「いずもデジタルスタジオ」
NASEF JAPAN 専務理事 大浦豊弘氏

スタジオ構想のヒントになったのは、大浦氏が米国で見た公立図書館の事例だという。そこでは本を読むだけでなく、映像や音楽、ゲーム制作など、誰もが最新のテクノロジーに触れられる場所になっていた。大浦氏が共感したのは、家庭の経済状況に左右されず、誰もが新しい技術を体験できるという考え方だった。日本の図書館で同様の環境を整えるのは難しいことから、テクノロジーとの親和性が高い科学館に着目したという。

いずもデジタルスタジオでは週末を中心に、子供向けのゲームプログラミングから、大人向けのAI講座、シニア向けのスマートフォン相談会まで、幅広い世代を対象とした講座が開かれている。運営を担う島根県eスポーツ連合の木村氏によると、最近では1日100人を超える利用者が訪れることもあるという。

サードウェーブによる企業版ふるさと納税の支援を活用して、デジタル拠点の整備を進めてきた島根県。ゲームやeスポーツを入口に、世代を超えたデジタル学習の機会を広げ、地域の課題解決にもつなげている。企業と自治体、地域の団体が連携したこの取り組みは、ほかの自治体にとっても参考になりそうだ。

KONAMIの『ワイワイワールド Craft』で、ゲームづくりに挑戦

会場では、ゲームを「つくる」楽しさや、遊びながら「考える」楽しさを味わえるタイトルも目を引いた。その中から、筆者が特に注目したタイトルを紹介しよう。

株式会社コナミデジタルエンタテインメントのブースでは、ユーザーが自分でゲームを作って公開できるプラットフォーム『ワイワイワールド Craft』を紹介。試遊スペースも設けられていた。

『ワイワイワールド Craft』は、ゲームを「つくる」「あそぶ」「つながる」の3つの要素を備えた新しいタイプのゲーム。PCやタブレット、スマートフォンに対応し、基本無料で提供される予定だ。

株式会社コナミデジタルエンタテインメント『ワイワイワールド Craft』のブース

試遊スペースでは、収録されている公式ゲームの1つである3Dアクションゲーム『パルクール ピョピョケロ大脱走!』を体験できた。プレイヤーはアクター(操作するキャラクター)を選び、アスレチックのようなステージで障害物をジャンプしながらゴールを目指す。

操作するキャラクターを選んでプレイスタート!
ジャンプで障害物をクリアして、ゴールを目指す

こうした公式ゲームは、遊ぶだけでなく、自分でゲームを作るときの土台にもなる。自分でゲームを制作できるツールはすでに数多く存在するが、本格的なものほど操作や設定が複雑で、初心者にはハードルが高い。その点、本作は、公式ゲームをベースに作り始められるうえ、1ステージだけで完結するシンプルなゲームづくりから挑戦できるのが特徴だ。

ゲームの制作画面のイメージ

初心者向けには、「マジックポッド」という機能も用意されている。キャラクターと会話しながらいくつかの質問に答えるだけで、約3分でゲームの土台を自動で生成してくれる。ゲームづくりは難しそうと感じている人でも、気軽に一歩を踏み出せそうだ。完成したゲームは公開でき、ほかのプレーヤーに遊んでもらったり、一緒に遊んだりできる。

「マジックポッド」でいくつか質問に答えると、ゲームが自動生成される

さらに、ゲームファンにとっては、『悪魔城ドラキュラ』や『魂斗羅(コントラ)』など、KONAMIの人気ゲームのキャラクターを使って遊んだり、ゲームを作ったりできるの点も大きな魅力だろう。

ワンダーファイの新作、ひらめきで解く協力パズル『ピンとくルール』

思考力アプリ「シンクシンク」や通信教材「ワンダーボックス」を手がけるワンダーファイ株式会社は、バンダイナムコスタジオのインディーゲームレーベル「GYAAR Studio」のブースに出展した。

ワンダーファイ株式会社のブース

同社は昨年、初の完全オリジナルゲームとなる2Dパズルアクション『CYCLIA JOURNEY』を発売。今回のTGS2026では、同社のゲームタイトル第2弾となる新作『ピンとくルール』を初公開した。

「空間」を写し取り、つなぎあわせてゴールを目指す2Dパズルアクション『CYCLIA JOURNEY』

『ピンとくルール』は、4人で協力して遊ぶパズルゲーム。もとになったのは、同社の通信教材「ワンダーボックス」の会員向けコンテンツだ。ワンダーボックスは4〜10歳の子供を対象に、毎月届くパズルやワークブックなどのキットと専用アプリを組み合わせ、プログラミングやアート、パズルなどを遊び感覚で学べるSTEAM教材だ。

4人で協力して、図形や線を動かしクリアするパズルゲーム『ピンとくルール』

このゲームの面白いところは、ルールを自分たちで見つけ出すこと。画面に並んだ図形や線を触ってみると、何かが動いたり、変化したりする。プレーヤーはその反応を手がかりに「こうすればいいのでは」と考え、仲間と相談しながら試していく。ルールが見えた瞬間にクリアできる、謎解きのような楽しさがある。

同作は、4人で声を掛け合いながら遊ぶパーティーゲームとして作られており、ゲーム実況などで盛り上がりやすいことも意識したそうだ。夢中になって遊ぶうちに、自然と観察し、考え、仲間と協力する。そんな仕掛けが印象的だった。

ゲームを入口に、広がる学びの可能性

今回のTGS2026では、ゲームと子供たちの学び、さらには教育機関や自治体を結びつける多様な取り組みが見られた。eスポーツを通じた大学での学びや地域のデジタル人材育成、誰もがゲームづくりに挑戦できるツール、そして遊びながら思考力を働かせるパズルゲーム。それぞれアプローチは異なるが、共通しているのは、ゲームへの興味や楽しさを、その先の学びにつなげようとしていることだ。

ゲームを楽しむだけで終わらせず、「もっと知りたい」「自分でもつくってみたい」という気持ちをどう広げていくか。TGS2026の会場には、ゲームが持つ教育的な可能性を考えるヒントがあった。

(C)KONAMI Digital Entertainment.

本多 恵

フリーライター/編集者。ゲーム誌・Web媒体、育児系メディアでの執筆を経て、現在は教育ICT分野を中心に取材・執筆。学校現場のICT活用や教育DX、生成AI、特別支援分野でのICT活用を追う。ゲームや遊びを学びにつなげるエデュテインメントにも関心を持つ。小学生2人を育てる母として、保護者の視点を大切にし、AI時代の学びの今を現場の空気とともに伝えている。